中国甘粛省の黄河石林トレイルレースでの天候急変による死亡事故に関して

今朝、非常に残念なニュースが入ってきました。

【5/24更新】上位6位の選手が、海抜2200m地点で意識を失ったにもかかわらず、羊飼いに救助されて、奇跡的に生還された話を追加しました。

5/22~23の2日間で中国甘粛省で開催されていたトレイルランニングレース「黄河石林百公里越野赛」で21名の犠牲者が出ました。報道によると標高の高い所(20~30km地点)において雹や凍雨、強い風などの異常気象が発生していたそうです。参加者のうち21名のランナーが亡くなったとのことです。私が記憶している中では、過去最多の犠牲者が出たレースではないかと思います。

また、その犠牲者の中には、2019年のUTMFで男子2位でゴールした中国人のトップトレイルランナーのひとりである梁晶(Linag Jing)もいました。彼のことは過去に当サイトでも記事にしたことがあり、私も注目していた選手の一人でした。また、亡くなった21名の殆どが中国のトップランナーとのことです。非常にショックです。

急な天候変化による低体温症

現地メディアおよびNHKなどの海外メディアによると、死因は低体温症によるものだと考えられている。レース当日の天候は「最高気温19度、最低気温9度の曇り」。事故が起きた場所は標高1500m付近とのことで、気温は10度前後になっていたのではないかと推測される。ただ、10度前後の気温であれば無風で雨が降っていなければ、走りやすい気候ではないかと思う。しかし、大雨や雹で強風の条件となれば、レインウェアや防寒着がないと非常に危険だ。

参加者による声

当日レースに出場された2名が、当日のレースの状況について中国の動画サイト(西瓜视频)にアップされていたので、そちらを紹介させていただきます。(※翻訳が一部誤りがあるかもしれませんのでその点ご了承ください)

市民ランナーの方の証言

画像
我的首百失败,白银市黄河石林越野,想吐槽又不知往哪吐(西瓜视频より引用)
  • 前日の技術会(ブリーフィング?)で、レインウェアや防寒着はドロップバッグの中に入れた。それはCP6にある。
  • レーススタート時は天気は問題なかったそうだが、だんだんと風が強くなって大雨も降って、立つことができなかった。レインウェアや防寒着は持ってなかったので、怖くなって途中で引き返した。
  • 途中で小屋に入って退避。するとだんだん増えてきて、40名ぐらいのランナーが入ってきた。
  • その後、村民に革製の上着を貰ってCPまで歩いて戻る。
  • CP到着後は、車両の中で4時間ぐらい待機して、スタート地点に戻った。
  • 装備を軽装にした理由は、天気予報によると熱中症対策するようにとのことだったので、服装も軽装にした。周りのランナーも半袖ばかりだった。

また、CP2の動画を見ると、すでに雨が降っていて、かつ風は強く吹いていた模様です。

上位6位で奇跡的に生還された選手の証言

对话甘肃山地马拉松前六名唯一获救者:昏迷两个半小时后被放羊大叔救回,只有回家才是终点(西瓜视频より引用)
  • 33km、海抜2200m地点で2時間半ほど意識を失っていた。
  • 羊飼いの男性に助けれて、気づけばエマージェンシーブランケットに包まれていた。
  • その後彼の羊の小屋に連れてかれて、火で暖を取ってもらった。
  • 私の前後を走っていた選手はみんな亡くなった。
  • 先頭集団は梁晶を含めて3名とのこと。
  • 目が空けられないくらい風が強かった。そして、非常に冷たく、筋肉が固まったように感じた。
  • 装備はソフトシェルのみで、レインウェアや防寒着は持ってなかった。これらがあれば、状況は良かったと思う。選手の中には短パンにタンクトップの人も居た。
  • 大会は、今後は必須装備品のルールを設けたり、今回の危険箇所にレスキュー隊やボランティアを配置すべき。
  • 現在、家族から今後このようなレースを走るなと言われているが、私は今後も走るつもりだ。
  • 今回の事故を教訓に、必ず緊急時の装備を持って走るし、もう少しゆっくり走る。
  • 完走することや表彰台に立つことがゴールではなく、無事に家に帰ることがゴールだ。

彼も、レース出走前は「熱中症対策するように」と呼びかけられていたため、軽装で走ったと証言している。また、動画の中には、SUUNTOのアプリのスクリーンショットが流れており、33km地点/海抜2200m付近で、ずっと停止していたことをグラフで示されている。

自然の怖さ、そして装備の大切さを改めて感じた

実は、私がトレイルランニングを始めた頃(10年ぐらい前)、福井~京都で開催された「鯖街道マウンテンマラソン」で、同様の気候で雨に降られてかつ強風で身体が冷え切ってしまい、結果的にリタイアしたことがある。

スタート時点は少し暑かったぐらいだったが、山中に入ると雨が降り出して、そして風も強かった。残念ながらその時はレインウェアを携行してなかった。その結果身体がかなり冷えて、震えが止まらなくなった。幸い、1kmぐらい先にエイドがあったため、そこで休憩や応急処置をしてもらったが、スタッフのアドバイスもありここでリタイアをした。一歩間違えれば、命に関わる状況であった。それ以降、私はレースでも練習でも、レインウェアやサバイバルブランケット、気候に応じた防寒着は常に携行している。

山の天候は急変する。また、海外の山となると尚更、何かあったときようにセルフレスキューできるだけの装備は持つべきだと考える。アジアであれば日本よりも暑い地域でのレースが多いので、軽装になりがちだ。しかし、オーガナーザーによっては必須装備品や推奨装備品がリストされているので、それらは基本的にすべて持つべきでしょう。あとは自分の経験値も踏まえて、追加で装備は携行すべきだと思う(必要に応じて、携帯電話のバッテリーであったり、より温かい装備、着替えなど)

私の場合は、必ずレインウェアやサバイバルブランケット、ファーストエイドキットは持ち歩くし、100kmなどの夜通し走るレースとなると防寒着なども携行して走ります。これは香港や台湾でもそんな感じです。(寒さもそうだが、暑さによる熱中症も怖いので、水分や電解質、そしてエネルギーとなる行動食もしっかりしたほうが良い)

非常に悲しいニュースであったが、今回の事故で改めて装備の大切さと自然の怖さを知りました。

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